かなりテンポよく読めました。
ゲーセンに通って一度でも対戦をした事がある人なら誰しもが経験する葛藤なんかがかなりリアル。
ゲーム好きなら誰しも一度はブチ当たる問題を作者なりに解決しているのもよかったです。
新しい世代の小説家だからこそ書ける話だと感じました。


決して特別な誰かのお話ではなくて、誰しもにあり得るお話。
そう一番感じさせたのが、ネットに依存してしまった友人のくだり。
今問題となっているニートやひきこもりなんかの一例としてよくある話なんですが、ネットへのめり込み具合なんかがよく書けてる。
だんだん現実への興味が薄れて、次第に関わらなくなっていくって言う過程をヒゲなんかで表現していたのは巧いなぁと感じさせました。

主人公の大学生活や、進展しない彼女との関係、その辺の話がこの小説のリアリティを上手い具合に支えてるのかなぁ。
銃が手元にあったために誤って人を殺してしまった少年の物語。
なのになぜこんなにユーモラスとウィットに富んだ主人公の告白で物語は進むのだろう?

親父がハーケンクロイツにかぶれてたり、芸術家気取りのニートだったり、かなり悲劇的な内容なのに何故か出てくるのは笑い。

社会不適格者といわれる人達がこの物語には多く登場する、ってかほとんどがそれなのだが、おもしろおかしく書かれた文章はどんな奇人変人アル中薬中も愉快な登場人物の一人にしてしまう。まさにヴォネガット。ブラボー。


連作短編小説の形式をとった本作。
各章ごとのタイトルと内容のマッチがいい味を出しています。

タイトルから次はどんな臓器の話か分かるのもいいし、どう物語が広がっていくかを考えるのも楽しい。

本書後ろのあらましだけ見ると、最強エスパーがばっさばっさと難事件を解決していく……みたいに書かれてますが、全然そんなことありません。


サイファ(エスパー)の力を使って、物を浮かせたり、人の心をある程度読むことはできるけど、物を浮かせたいなら手を使えばいいし、人の心なんて完全に読めないから会話をして
理解しあった方がいい、と最強の超能力に絶対の自信を持っている……という風には感じられません。

主人公の菊月虹(きくづき こう)はことあるごとに「サイファの能力は人間が進化する過程で捨ててきた能力」だと言ってはばかりません。

不必要に周りの感情に流されそうになってしまったり、恐ろしい幻覚を見てしまったり、自分と他人との境界があやふやになってしまいそうになったり。

サイファという力は世間では「強力な武器」と認識されているが、実際にはそんなことはないと主人公のコウは語ります。

「この能力のせいで余計な面倒を背負う羽目になる」とコウは愚痴り、
「尻尾のような物」と自分の能力を評しています。

積極的に能力を使っていくという訳ではなく、ただただあると便利な場合もあるから使っているという感じです。
そんなコウは常に自然体で「来月の家賃は払えるだろうか?」「パンにカビがはえてないだろうか?まだ食えるか?」などと、悩みも庶民的。

超能力物にありがちな、最強の能力を持ってしまった故の葛藤とかそういってものとは一切無縁な割とダメなおっさん主人公です。

なのにカッコよく見えてしまうから不思議。

そして本作を語る上で欠かせないであろうキャラクターが、コウの兄であり年下の女性。
美しきトランスジェンダー・エージェントのMJでしょう。

このキャラクターはコウと正反対で、自分のサイファ能力を駆使して仕事を得て、
その能力に絶対的な自信を持っています。

そしてなにより超攻撃的な性格。
自分に向かってくる脅威は問答無用で排除するという恐ろしい女性?です。

しばしばコウと出くわし衝突するのですが、二人が表面上は憎みあっている(MJが一方的にだけど)が依存し合っていることが見て取れます。

ていうかMJ可愛い。男で40代でカマだけど。


読後に知ったのですが、ソノラマ文庫版の表紙はかの高河ゆんだったそうです。

見てみたけど表紙のコウが全然おっさんじゃないし。
挿絵などでMJはなかったそうですが、がゆん的MJも見てみたかった……

中編を含む短編小説集。

「大洪水の小さな家」
「死体と、」
「慾望」
「子供たち怒る怒る怒る」
「生まれてきてくれてありがとう!」
「リカちゃん人間」
の6つを収録。

特に印象に残ったのは「死体と、」そして表題にもなっている「子供たち怒る怒る怒る」だろう。

「死体と、」の文章を見ると佐藤が成長していることが直ぐにわかると思う。
以前までは「舞城よりも突き抜けていない」等と言われていた(僕自身も言っていた)が、この文章を見る限りでは、舞城や西尾などの、所謂「メフィスト作家」達のどれとも違う独特の世界観を構築していることは明らかであろう。

単純に文章の質が上がっただけではなく、独自のテイストを手に入れた佐藤さん。
これはひょっとしてかなり恐ろしいのでは?

解説にも書かれていたのでアナーキスト云々については書かないが、社会に認めてもらえない子供たちがいずれ「慾望」で登場したような刹那的快楽主義のテロリストになってしまうのかと思うと恐ろしい。

そして実際に昨今、子供たちの犯罪が増えているという報道もよく聞く。

僕はこれらの報道が子供たちに「こんなcoolなことがあるんだZE」とより悪い方向に導いてる気がする。
報道するなとは言わないが、電波に乗せて公にする以上は責任を持った報道をして欲しいものだ。

うわっ話がそれました。

短編なので区切りがつけやすく読みやすいと感じました。
仕事の合間合間などに是非読んでみてください。
相変わらず佐藤さん。イケメン佐藤さん。
しかし感想を書く俺はイケメンではない。

今回のお話は閉じ込められた人、閉じこもりたい人、閉じこもらざるを得なかった人の三人が進めます。


構成が巧すぎて、参考にもなりません。
ちくしょー……

謎を解明するまでの時間が長すぎる気がしますが、それまでに淡々と狂気や苦しみを描くのは素晴しく佐藤さんらしい。

これで文庫化された鏡家サーガは全部読んだ事になりますが、こう見ると、どの物語も毛色が違っていて面白いですね。

ただ、構成の力としては「水没ピアノ」が圧倒的に優れている気がします。

この完成度の高さはすごいです。一読の価値アリです。
佐藤さんの本は二冊目です。
うろ覚えながら感想。


ってか子供たち怒る怒る怒るとかも読んでみたいのですが、近所の本屋においてないです。
本屋頑張れ。


本作の主人公(仮)は鏡綾子は、フリッカー式でも登場した鏡公彦の姉です。
予言の力を使って大暴れ……なはずですが

その他に主要人物として
人肉しか食べられない少女
コスプレをすることで現実の自分から抜け出そうとする少女
学校内でひどいいじめを受けている少女
そしてもうひとりの自分に襲われたという少女

濃い、他のキャラクターが綾子以上に濃い。
これは綾子が埋もれる。

まぁいろいろ問題児が出てくるわけですが、なぜ綾子が(仮)なのかというと、
タイトルには主役みたいに書かれていますが、実際はただの脇役以下に成り下がってます。

綾子はそのことに不服らしく、全ての事件に介入し、解決に向かわせようとします、が結局はそれすらも予測された事態だったというオチ。

ってか預言者のオンパレードです。
綾子が「スタンド使いは最初は選ばれ者だけに使える能力だったはずなのに」みたいなことを言いますが、まさにそんな感じ。

物語に登場する人物が皆運命に逆らおうとするのですが、どこか諦めていて、結局運命には逆らえない。
そんな話。
読んだのは大分前だけど感想

既存の形式に捕らわれず
斬新な角度から書かれた小説
って言えばもっともらしいですかね?

とにかく破天荒
リアリティが全くなく
物語もまっすぐ進まない
オチがまるでオチてない


でも何故か読み進めてしまった
そんな作品


狂気に満ちた登場人物達
先を読ませる気がまるでない展開
読者に全く媚びないってか読者を切り捨てようとする全く新しいジャンル

論理とか常識の箍はぶち壊して
狂ったまんまで突っ走るという爽快感

まんま脇役な主人公の「これは僕の物語だ!」発言は素晴しいと思う
ある種のメタフィクションですよね
ってかギャルゲー?

すごく好みが分かれる、ってか嫌いな人は読んだあと壁に投げつけると思う


作者がやりたいようにやった
そんな感じです

あとオチは受け付けない人が多そうです
それがアリならもうなんでもアリってオチなんで……

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